糖尿病腎症とは?
糖尿病腎症は、糖尿病の3大合併症の1つで、腎不全に陥ると命にかかわる重大な病気です。日本で人工透析を受けている患者さんの内、実に44%もの人が、糖尿病腎症によるとのことです。
腎臓は、老廃物をろ過してきれいな血液を体中に運び、不要なものは尿として排出するという、大切な役割を果たしています。ろ過装置として機能している細かい血管の塊を、糸球体といい、左右それぞれの腎臓に100万個ずつもあります。
糖尿病腎症は、この糸球体の細かい血管が、糖尿病による高血糖状態の長期継続でダメージを受けてしまい、老廃物のろ過が正常に行われなくなることによって引き起こされる病気です。
糖尿病腎症の症状
- 第1期「腎症前期」~第2期「早期腎症期」
- 第3期「顕性腎症期」
- 第4期「腎不全期」~第5期「透析療法期」
自覚症状はありません。微量のタンパク質(アルブミン)が尿に出ます。
微量アルブミンが出始めてから10年ほど経過すると突入すると言われています。むくみ、息切れ、食欲不振などの自覚症状が表れてきます。ネフローゼ症候群と呼ばれる状態です。腎機能の低下が進むため、高度なタンパク尿が出ます。浮腫がみられることもあります。血圧も上がっていきます。
腎臓はほぼ機能しない状態となります。慢性的な貧血により顔色が悪くなり、疲労感、手足のしびれが
出ます。低カルシウム血症により、筋肉のこわばりや痛み、発熱症状が出ます。さらに症状が進むと、尿毒症による肺水腫や心不全により、命にかかわる状態となります。
糖尿病腎症の治療
- 第1期
- 第2期
- 第3期
- 第4期
- 第5期
症状はありませんので、糖尿病を悪化させないための食事療法、運動療法、薬物療法を行います。
血糖コントロールをよりしっかり行っていく必要があります。血圧を下げる治療も必要です。塩分と激しい運動は控えるようにします。3か月ごとに尿中のアルブミン量を調べる検査をして経過観察します。
引き続き、血糖コントロールおよび降圧治療のほか、タンパク質制限も行います。血液、尿たんぱく、腎機能を1か月ごとに検査する必要があります。
上記に加え、透析治療の導入を検討します。一般的な血液透析の場合、1回につき4~5時間かかる血液の浄化を行うために週3回程通院する必要があります。また、血液透析を行っていない日は、水分摂取量に注意が必要です。
腹膜に透析液を直接入れて持続的に血液の浄化を行う腹膜透析という方法もありますが、時間や場所の束縛がない反面、1日4回透析液を取り替える等の自己管理が適切に行われなければならず、腹膜炎を起こす危険もあります。このように、人工透析が始まると、生活上の負担ははかりしれません。
腎臓が機能していないので、人工透析が行われている状態です。腎臓移植手術を行うことで状態が改善されますが、腎臓は常に不足しており、糖尿病腎症を理由とする腎移植はあまり行われていないのが実情です。
糖尿病腎症の予防
糖尿病腎症は自覚症状がないまま何年もかけて進行します。自覚症状が出た時には、すでに相当症状が進んで、透析を検討しなければならないところまで来てしまっています。
腎臓が機能しなくなると、生命を維持するために、一生透析を続けるか、腎移植に頼るしかありません。したがって、なにより予防が大切であることは言うまでもないのです。
予防には、最大の原因である高血糖を継続させないことです。血糖コントロールを行い、血糖値を正常に保ちましょう。また、腎機能への負担を考慮して、過食や、タンパク質・塩分の取りすぎが無いようにしましょう。
また、早期発見に努めることも大事です。
最低でも年1回は、微量アルブミン尿検査を受けましょう。また、健康診断の血液検査で検出されるクレアチニン値は、腎機能に関係する値ではありますが、軽度の腎機能障害だと判定できません。
そこで、血中クレアチニン値を年齢や性別で調整した、「eGFR(推算糸球体ろ過量)」という値が指標にされるようになってきました。
さらに、糸球体のろ過機能をより正確に把握して初期の腎機能障害を把握するのに、「クレアチニン・クリアランス検査」が有効とされています。
まとめ
- 糖尿病腎症は、最終的には生命維持のための人工透析が必要となる恐ろしい病気で、自覚症状無く何年もかけて進行するため、予防と早期発見に努めることが大事
- 糖尿病治療の基本である血糖コントロールは、糖尿病腎症の予防にもなる。タンパク質・塩分の取りすぎにも注意
- 糖尿病腎症の早期発見には、微量アルブミン尿検査、eGFR値の検査、クレアチニン・クリアランス検査が有効
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